text=大我さやか(OpenA ltd.)
2013年2月23日に茨城県取手市で開催されたクリエイティヴ・ダンチ・サミット。関東の団地で活動する面白い人々を集めたサミットの模様、レポートします!


まずは三浦 展さんのレクチャーからスタート!

団地で活動する面白い人、集まれ!

団地R不動産でも取材させて頂いた、井野団地(茨城県取手市)を拠点として活動する取手アートプロジェクト(TAP)。その呼びかけで、関東の団地でユニークな活動をしている5組のプレゼンターが集まり、郊外団地のこれからについて考えるサミットが開催されました。

カルチャースタディーズ研究所主宰/消費社会研究家の三浦 展さん、東京アートポイント計画ディレクターの森 司さんというゲストスピーカー陣に団地R不動産のメンバー・馬場正尊も加わり、現場ならではのやりがいや悩みを本音でクロストーク。

会場には団地R不動産も展示協力させて頂いた「団地オモシロアイデアウォール」や、「住宅都市整理公団」の活動などで知られる大山 顕さんによる「団地偏愛型ライブラリー」、プレゼンター5組の日々の活動を紹介するフォトドキュメンタリーなど、展示コンテンツも盛りだくさん。サミット当日は、学生から高齢者まで多くの方が会場にお越しになりました。


(左上)プレゼンターの活動を紹介するドキュメンタリーボード。(左下)団地オモシロアイデアウォール。(右2点)「住宅都市整理公団」などで知られる大山 顕さんが手がけた団地偏愛型ライブラリー(住宅都市整理公団HP

団地は大きなシェアハウス!?

三浦さんのレクチャーを皮切りにサミットはスタートしました。住宅や団地の変遷を追いながら、2010年に約1.3億人だった日本の人口が2055年には終戦後間もない1950年代と同じ約8.6千万人まで減少してしまうとされる日本の中で、団地はどうあるべきか?というお話。その中で「団地をシェアする」というのもひとつの手なのではという意見が出ました。団地そのものが大きなシェアハウスなのかもしれません。

続いて、各プレゼンターによる活動紹介。プレゼンターは「リビングルーム・プロジェクト(埼玉県北本市・北本団地)」「ロクナナ団地(千葉県松戸市・小金原団地)」「村山団地 まいど~宅配(東京都武蔵村山市・村山団地)」「NPO法人 ちば地域再生リサーチ(千葉県千葉市美浜区・高洲団地他)」、そして取手アートプロジェクトの5組。プレゼンターのうち、ロクナナ団地は千葉郊外の小金原団地でシェアハウスを実践しています。地域暮らしをコンセプトに、農家や料理人、旅行企画など地域で仕事を持ちながら3人で団地のシェアライフを楽しんでいる様子。


団地の商店街の中に“居間”を出現させるアートプロジェクト、「リビングルーム・プロジェクト」。

団地が大きなシェアハウスであるという発想で言えば、アーティストの北澤 潤さんが展開する北本団地の「リビングルーム・プロジェクト」も通ずるところがあるかもしれません。団地の1階にある商店街の空き店舗に団地住民から集めた要らない家具を持ち込んで、住民で共有できる「居間」をつくり、さらに物々交換のシステムを取り入れることによって、いろんなシーンがそこに生まれるようになったと言います。カラオケセットが持ち込まれればカラオケ大会が、調理器具がやって来たらカフェが、というように、持ち込まれるものによってさまざまなコミュニケーションやイベントがここで起こるようになっています。


5組のプレゼンターがそれぞれの活動を紹介。

団地を再編集する

ちば地域再生リサーチは、千葉の高洲団地等で団地のリフォーム工事の相談やサポート、団地住民が先生になる団地学校を企画・主宰するなど、さまざまな団地暮らしでの仕組みづくりを行っています。一方、村山団地「まいど〜宅配」では、送迎サービスによって引きこもりがちだった高齢者が商店街を訪れるきっかけをつくっています。
興味深かったのは、取手アートプロジェクトの発表で、団地でアートプログラムを展開することによって、世代にかかわらずフラットに付き合えるコミュニティーハブをつくり出せていると話していた点でした。
どこも団地というたくさんの人が住んでいる場だからこそできることで、人とのつながりや住んでいる人の魅力を引き出すような活動を展開しています。


後半はゲストスピーカーとプレゼンターが一緒になってガチンコトーク。

サミット後半に行われた、ゲストスピーカーとプレゼンターのクロストークでは、活動を経済価値やコミュニティービジネスにどう結びつけていくかといった、現場ならではの悩みが話題の中心に。
その中でも異彩を放っていたのが、ロクナナ団地の3名の暮らしの価値観の話でした。生活の7割を「地域で働いて稼ぐ」のに使い、残りの3割を「地域のために仕事をする」のに費やす、と。実際に、地域の中心市街地を元気にするためのコミュニティーカフェを運営しています。彼らの「儲けてはいないけれど、困ってもいない」とあっけらかんと言いきる姿勢が印象的でした。
またそれに続いて、ゲストスピーカー・森 司さんはこうコメントしていました。「暮らし方の価値観が変化してきている。仕事の対価が必ずしも貨幣でなく、もっと違ったものになり始めているのかもしれない。これからの仕事は必ずしもペイドワーク(金銭が支払われる仕事)というところに帰結するとは限らない」。

郊外の団地は、魅力的な緑やのんびり豊かな環境に恵まれながら、しかし同時に、高齢化、空洞化、老朽化、商店街の衰退など、問題の多さもまた目立っているかもしれません。この5組のプレゼンターが活動する団地もその例外ではないと思います。

でも今回集まったプレゼンターたちは、団地という場所やリソースをうまく使って、団地を面白く住める場所に変えていこうという共通の意識を持っています。そういう人たちが団地に増えていくと、団地はもっとハッピーな場所になるだろうなと、楽しい空想が膨らむダンチサミットでした。

■「クリエイティヴ・ダンチ・サミット」 プレゼンターの皆さん

リビングルーム・プロジェクト(埼玉県北本市・北本団地 北澤潤)

ロクナナ団地(千葉県松戸市・小金原団地 吉岡龍一)

村山団地 まいど~宅配(東京都武蔵村山市・村山団地 比留間誠一)

NPO法人 ちば地域再生リサーチ(千葉県千葉市美浜区・高洲団地他 東秋沙)

取手アートプロジェクト(茨城県取手市・井野団地 羽原康恵)