text=大我さやか(OpenA ltd.)
京都にある堀川団地のリノベーションプロジェクトの連載コラム第2話。今回は、気になる団地の内部を覗いてみます。


先日地元の方を対象に行ったビフォー内覧会では、多くの大学生や地域の方々にご参加いただきました!初めて見る団地の内部に皆さん興味津々。

団地の中に路地? 屋外空間の魅力。

戦後間もない頃に建設された堀川団地。当時まだ珍しかった水洗便所や都市ガス、電気コンセント、造作家具付きの台所などを備えた住宅は憧れの的で、入居の抽選倍率は50倍もあったという。
建設当時はまだ日本住宅公団もなく、住戸設計のルールやフォーマットも存在しない、いわば団地の黎明期。その時代に建設された堀川団地には、いわゆるスタンダードな団地とは異なる、この団地にしかない特別なしつらえが残っている。


2階は広い屋外廊下に面している。鉢植えの緑がいいアクセントに。

前回のコラムでもご紹介した通り、堀川団地の1階はアーケードの商店街だ。その店舗と店舗の間に、ひっそりと2、3階の住戸へのアプローチとなる階段がある。薄暗い階段を上って2階に上がると、スコーンと抜ける青い空。十分過ぎるくらい広い屋外廊下には、住民が育てている鉢植えが並んでいたりする。堀川団地の裏側にこんな景色が広がっていたなんて、と表から見る団地の印象とのギャップに驚く。雑多だがどこか懐かしい、人々の生活感が滲む風景。路地のように、個人の庭と共用空間とが混ざり合ったような曖昧な場所。

リノベーションではこの雰囲気を生かし、広い廊下半分にウッドデッキを敷いて、住民が憩う場所になる予定。軒先も自分の部屋の延長のように使えるだろう。


屋上に上るとこんな景色が広がっていた。

さらに階段を上がって屋上へ行くと、低層の団地にもかかわらず、予想もしなかった風景がそこに広がっていた。京都の夏の風物詩、大文字までもが眺めることができる細長い屋上が現れる。高い建物が少ない京都だからこそ、3階分の高さからでも東西南北360度見渡せる。西には西陣の古い街並みが、東には堀川の遊歩道が見える。夏はここでビアガーデン気分が楽しめる、なんとも羨ましい屋上だ。

団地の中に、町家?


コンクリート造の団地にしっくいの壁。なかなか見られない組み合わせ。

京都といえば、町家に憧れる人も多いだろう。この堀川団地は、鉄筋コンクリート造の団地なのに、まるで町家がすっぽり入ってしまったかのような空間構成が特徴的だ。
住戸の中に入ると、日本の伝統家屋の特徴である真壁の間仕切りやしっくいの壁。和室2室を隔てる梁下の欄間には、長細い窓が開いている。クーラーや扇風機のない時代、東西にある窓から住戸内に風を通すための工夫だろう。天井には装飾的なしっくいの廻り縁がまわっていて、洋館のデザインを意識させる。


団地に残る建設当時の食器棚とキッチン横の小窓。ちょっと低めの配膳台がなんともかわいらしい。

窓から光がいっぱいに広がるキッチン。タイルや青色の壁に改修され、住んでいた人のインテリアへのこだわりが感じられる。

キッチンには造付の食器棚が備えられ、キッチンと和室の間の壁には配膳用と思われる小さな窓が。きっとお母さんがつくった料理を、この窓を通して茶の間の家族に手渡していたのだろう。この部屋のキッチンには、住民が手を加えたと思われる、淡い水色の塗装やピンクのかわいらしいタイル。賃貸なのだがどの部屋も内装や設備がバラバラだ。なんと、風呂なしの団地なのにタイル貼りの浴槽が後から付けられている部屋まであった。

手を加えながら、住む。


左:竣工当時の造作食器棚が現在も残っている。右:手作り風呂!?

同じ間取りなのに、どの部屋も手が加えられ、壁に木目の化粧材が貼られていたり、キッチンが入れ替えられていたり。この団地だからこそのいとおしい風景として残したい、そんな気持ちにさせられる。画一的な団地ではなく、ひとつひとつ職人の手仕事でつくられた団地だからこそ、大切に住み継がれ、この風景が今も残っているのかもしれない。
今回Open Aの担当する4つの住戸のリノベーションでは、それぞれかつてのディテールや雰囲気を残しながらも、住み手が手を加えられる住まいをつくろうと思う。
そのリノベーションのコンセプトやプランは、次回のコラムをお楽しみに。

実験住戸に住むコラボレーターを募集します。
募集説明会を7/13(土)堀川団地にて開催!


募集説明会では、堀川団地の歴史や商店街の魅力、Open A/東京R不動産による馬場正尊のリノベーションのアイデアレクチャーもあります!

今回Open Aが設計する4つのリノベーション住戸。「堀川DIY実験」と称する、住人が手を加えながら暮らす実験モデルだ。その実験居住に参加するコラボレーターの募集コンペを7月16日から開始する。
コラボレーターとは言いつつ、コンペに通れば長く住んでも構わない(ただし10年間の定期借家契約)。躯体に手を加えるのはNGだが、壁や柱などに釘を打っても色を塗っても、絵を描いても、何をしてもOK! 住むことが前提だが、住まいとしてだけでなくアトリエやギャラリーを兼ねたり、ちょっとしたパーティーやイベントで住まいを開放するのもアリ。屋上や屋外廊下など、この広いオープンスペースを生かして、住民や地域の方々と積極的にコミュニティづくりができる方にも、ぜひ住んでほしい! 新しい時代の自由な住み方をぜひ堀川団地で実践してみてください。

コラボレーター募集コンペの説明会は、7月13日(土)に開催。興味のある方はぜひご参加を。

リノベーション住宅の居住実験のためのコラボレーター募集
募集説明会+ワークショップ

日程: 2013年7月13日(土)
場所: 出水団地第1棟 堀川会議室
京都市上京区西堀川通出水上る桝屋町28 番地118 号出水団地第1 棟1 階
内容:
  • 募集説明会:11:00〜/16:00〜
    ※いずれかの回にご参加ください。各回定員30
  • 解体現場フリー内覧タイム:12:00~14:00
  • リノベーションアイデアヒントレクチャー 14:00~15:00(定員30名)
  • 堀川団地のいいところワークショップ

※募集内覧会及びリノベーションレクチャーは要予約!
※参加申し込みについては下のPDFでご確認を。

リノベーション住宅の居住実験のためのコラボレーター募集(PDF)

京都府住宅供給公社 堀川団地再生まちづくり特設サイト

堀川DIY実験ウェブサイト

【連載】京都堀川団地リノベーションプロジェクト
第1回 京都にある築60年超のRC造・下駄履き団地のリノベーションプロジェクトが始動します!
第2回 気になる団地の中を覗いてみた
第3回 「内装を自由にいじれる『セルフビルド賃貸』」