text=大我さやか(OpenA ltd.)
リノベーションプロジェクトによって新しく4つの住戸が生まれ変わります。原状回復義務なしの「セルフビルド賃貸」の実験住宅です。


既存の部分を残しながら解体した住戸。土間の上にゴロンと和室を残したオープン和室プラン。

セルフビルド賃貸とは?

京都・堀川団地(注)の出水団地第1棟の4室で、Open Aが設計している実験住宅「セルフビルド賃貸」。最小限のリノベーションを施した住戸に、入居者が自由にいじれる余地を残した住宅だ。
(注)堀川団地は、椹木町団地、下立売団地、出水団地3棟、上長者町団地の総称

この堀川団地が立地するのは西陣織で知られる、京都でも有数のものづくりエリア。ものづくりの精神が脈々と受け継がれている地だからこそ、堀川団地には当時の設計者や職人のクリエイティビティーの一端を感じることができる。
生まれ変わる堀川団地には、西陣のものづくり精神を受け継いでくれる、クリエイティブな人に住んでもらいたい。その思いから、その団地や場所の歴史を継承し、既存の良い部分は残しつつ、自ら空間を編集して住む「セルフビルド賃貸」のプランを考えた。
住み方の手がかりとして、既存のパーツをあえて残した4タイプの住戸。今回は、その住宅のプランと解体後の様子を紹介する。


最も面影が少ない「スタジオ」プラン。コンクリートの床はこれから土間仕上げになる。

既存の「面影」を残したリノベーション

4つの住戸には、既存のパーツの割合=「面影度」を設定した。既存の内装を全て剥がしてまっさらにしてしまうにはもったいない。堀川団地は丁寧な手仕事でつくられた建物だ。漆喰・土壁・造作の食器棚など、京町家をつくるかのごとく、すべて職人の手によるものだ。
それらをあえて残しつつ、その割合を変えることによって新しい堀川団地の姿を探り、住み方の可能性を広げようと試みた。

各住戸は、もっとも面影が少ないプランから順に、「スタジオ」「オープン和室」「オープン土間」「町家」と名づけている。どれも、既存の和室2間と水回りという構成を活かしながら、入居者が手を加えられる余地を残したプランだ。
土間は、スタジオやアトリエ、ギャラリーなど、住居以外の使い方を受け入れる場所として、和室は寝室や居間としてプライベートな場所にも、パブリックに開かれた場所としても選択して使うことができる。


(図1)茶色の部分が既存、白い部分はリノベーションした空間。古い部分と新しい部分の混ざり方がプランごと異なる。

食器棚や土壁など、既存のパーツを残した「スタジオ」タイプ。

「スタジオ」タイプ(図1左上)は、一番面影が少ない半スケルトン状態のプラン。土間仕上げのワンルームで、水回りはコンパクトにまとめながら、鴨居や欄間、土壁など、職人の仕事でつくられた部分を残した。
スタジオのように、広い土間を活かして、住む以外のさまざまなシーンを受け入れる、自由度の高いプランだ。


この魅力的な屋外廊下を活かす、家の内と外をつなげるオープン和室タイプ。

「オープン和室」タイプ(図1右上)では、この連載の第2回でも紹介した開放的な屋外廊下という共用空間の魅力を活かし、ふらっと人が立ち寄ってホッと休めるような場が家の一部にあってもいいのではないだろうか、との思いから、屋外廊下側の和室を残した。玄関から反対側のキッチンまで続く土間は、住居として使ってもいいし、パブリックに開いてもいい。住み手が自由に選択して使うことができるプランだ。


奥の和室を残したオープン土間タイプ。

「オープン土間」タイプ(図1左下)は、奥の和室を残したプラン。屋外廊下側に設けた土間に対して、奥の和室はプライベート空間としてパブリックとプライベートを意識的に分けた。土間と屋外廊下とが地続きになっている良さを活かして住みこなしてほしいプランだ。


最も既存の部分を残した町家タイプ。和室2間は既存の間取りそのままだ。

「町家」タイプ(図1右下)は、和室2間を残したプランだ。できるだけ既存の内装を残した間取りに、まるで町家の通り庭のように、家の奥まで土間が続いている。廊下側の和室1間は、開放して人がほっこり集う空間、奥の和室はプライベートに、それを土間がゆるやかにつなぐような、京の町家の知恵を継承している。


住み方の提案コンペで選ばれた入居者と、実施計画を打合せ中。セルフビルドでの空間づくりをサポートしています。

4つのプランから生まれる、新しい住まい方

既存部分の残し方やプランが異なる4つの住宅。そのキャンバスに、入居者は思い思いの生活を描いて、セルフビルドで空間を編集しながら住むことができる。果たして、この空間・この堀川団地で、どんな住み方があり得るのか?このプロジェクトのもう一つのトライアルは、新しい住み方を入居希望者に提案してもらい、それによってここに住んでほしい人を選んだことだ。
住み方の提案コンペで選ばれた4人のクリエイターたちは今、これから始まる堀川団地での暮らしに夢を膨らませている。どんな方が、どんな住まい方を始めるのか? それは、次回詳しくレポートする。

と、その前に、2月上旬にはついに住戸のリノベーションが完了する。外部の工事は引き続き行われているが、セルフビルド賃貸はDIYをする期間を設けているため、一足先に入居できるようになっている。
そこで、入居者が手を加える前のお部屋を公開する内覧会を2/9 に開催予定。気になる方はぜひ現場を見に来てください!

■堀川団地出水団地第1、2棟リノベーションプロジェクト
リノベーション住宅先行内覧会

日程: 2014年2月9日(日)
場所: 13:00〜/15:00〜 ※2時間入れ替え制
会場: 堀川団地出水団地第3棟314 堀川会議室
定員: 各回20名 ※事前予約制
  • 当日は、堀川団地出水団地第3棟314 堀川会議室お集まり下さい。
    スタッフが実験住宅をご案内します。
  • 外壁工事が進行中のため、現場は足場や資材等があり大変危険です。靴や服装は動きやすい格好でお越しいただき、ヒールやスカートなどでのご来場はご遠慮ください。
  • 会場が狭いため、事前予約制です。当日の飛び入り参加ではご覧いただけない可能性もありますので、事前のご予約をお勧めします。
  • 事前予約は、下記問い合わせまで、メールまたは電話でお申し込み下さい。
    メールの場合は「2/9堀川団地内覧会参加希望」とタイトルにお書き頂き、参加者名、人数、希望時間、ご連絡先電話番号をお書きください。

お問い合わせ:
京都府住宅供給公社 業務推進部 街づくり推進課(担当:山本、谷口)
TEL:075-431-4151
E-MAIL:horikawa@kyoto-juko.jp

京都府住宅供給公社 堀川団地再生まちづくり特設サイト

堀川DIY実験ウェブサイト

【連載】京都堀川団地リノベーションプロジェクト
第1回 京都にある築60年超のRC造・下駄履き団地のリノベーションプロジェクトが始動します!
第2回 気になる団地の中を覗いてみた
第3回 「内装を自由にいじれる『セルフビルド賃貸』」