text= 千葉敬介(東京R不動産)
盛り上がってきました。館ヶ丘団地、改めTategaoka。
変化の兆しが次々に現実へと変わろうとしている今、ちょっと前のめりに、かつ暴走気味に
団地の未来を妄想しても、いいですか?


最上階の住戸「premium」のリノベーションが完成。このモデルルームを見たら、思わず借りたくなってしまうのも分かる。

倍率ドン!

予想以上に人気みたい。
ちょっと驚いてしまいました。そして嬉しい。
ボクらと同じように団地に未来を感じてくれる仲間が、こんなにいるんだっていうことに
勇気をもらうことができる。そんな結果が出ているようです。

前回レポートした、高層棟を改装した住戸「new basic」と
デザイナーが入ってリノベーションした最上階の住戸「premium」の募集。
今回、団地を訪ねたのは、1週間ぐらいあるその募集期間のちょうど真ん中なのですが
期間の終了を待たずして、すでに平均1倍以上の倍率で応募者がいる状態で
中には数倍の倍率が付いているという区画も!

ちなみに、誤解している人が多い(し、ボクらも前は誤解していた)ので説明すると
通常URでは新築以外で抽選方式が採られることは、ほぼありません。
普通の不動産屋で物件を借りるのと同じで、申し込んだ順に借りる人が決まります。

だけど、あえて今回は抽選方式で募集をしてみるんだ!
と、鼻息荒めに構想を語っていたのを思い出します。
みんなの支持を得られて、本当に良かった。

全国の団地を管理されているみなさん。
団地が再び若い息吹を取り戻すときが来ているようです。
是非、我々にお手伝いさせてもらえれば。

と、話がそれましたが、今回リニューアルされた住戸が人気だということは・・・
そう、若い人たちが再びこの団地に戻ってくるのだ、ということです。


これは団地で良く見かける風景。何してるのかな?と思ったら将棋なのでした。

カフェも要るかな?

さて、もうすぐ若い人たちが続々と団地にやってきます。

高尾山の中にあるような、すごい環境にある団地なので、休日はアウトドアというのも素敵です。
あるいは、部屋からの景色を眺めながら、音楽を聴いているだけでも一日楽しめてしまうかも。

先日出版した『団地に住もう!東京R不動産』という本で取材させてもらった吉田さんも
この館ヶ丘団地の住人で、休日はアウトドア三昧だと言っていました。

でもどうせなら、団地の商店街に小ぶりなカフェでもあったら素敵かも、と思うのです。
普段すれ違うだけの間柄でも、そこではちょっとしたコミュニケーションが生まれたりして。

あ、ボクらがそれを運営させてもらう、というのもいいかもですね。
ちょっと真剣に考えたくなってきます。

でも、実は簡易的なカフェは、すでにあるそうなのです。
しかも、お昼時にはいつも満席になって入れなくなるほど人気なのだとか。

その「カフェ」があるのは、団地の入り口にある「シルバーふらっと相談室 館ヶ丘」の中。
地域に住むお年寄りの人たちが、生活のことなどを気軽に相談するためのこの場所には
セルフサービスのカフェコーナーが作られていて、100円でお茶ができるそうなのです。

もちろん、若い人たちもここを使ったらいいじゃないか、というわけでは全然なく。

きっとお年寄りだけでも、そこまでのニーズがあるのだから
若い人も、お年寄りも、どちらも気軽に楽しめる、気取らないカフェがあったなら
世代を問わず団地の人たちに愛される、コミュニケーションの場になるのでは、と。

そう言えば、団地の風景で1つ印象的だったのが、ベンチで将棋を指すおじいちゃんたち。
真冬の高尾なのに、外のベンチ。でも将棋に夢中のご様子で。

もし、そこにカフェがあったなら、若い人たちとおじいちゃんが勝負をして楽しんだり
将棋教室が開かれたり、なんていう画を想像してしまうのは、ボクだけでしょうか?


若い人たちが増えると、団地には子供も増えていくのでしょうか。

「近居」って、ありかも

お年寄りと言えば・・・
最近、可能性を感じているのは「近居」というスタイルです。

たぶん、「近居」っていう言葉、初めて聞くという人がほとんどですよね?
ボクも数ヶ月前まで知りませんでした。

近居というのは、二世帯住宅のように複数の世代が1つの家に住むのではなくて
別々の家だけど近い距離に暮らす、という生活スタイルのことだそうです。

そう聞くと、ハッとします。
団地ってまさに、近居にピッタリの場所じゃないか、って。

例えば、小さい子供のいる若い夫婦と、その親夫婦。
同じ団地の別々の部屋に住んでいたとしたら、若い世代は子供を親に託して
しっかりと働くことができるので、収入的にもメリットがあるし
親世代にとっても孫と毎日過ごせるので、寂しい思いをすることもなくて
お互いハッピーな関係になりそうです。

二世帯住宅と違うのは、お互いの距離。
離れがたくベッタリと一緒になるのではなくて、お互いにプライベートを保ちつつ
どのぐらいの近さで暮らすのかは、お好みで。
そんな関係が現代の生活には、ピッタリ合いそうです。

そして敷地が29ヘクタールもある、この広大な館ヶ丘団地なら
距離の取り方だって自由自在。

2階建の家のように、同じ棟の同じ階段を使う関係でもいいし
叫んでも聞こえないぐらい遠くに離れることだってできるのです。

介護など、お世話が必要になったら、もっと近くへ。
なんてことも可能。

これぞまさに、たくさんの人が集まって住むことのメリット。
同じ場を共有することの楽しさに、改めて気付かされるようなスタイルです。

いや・・・
血はつながっていなくても、お気に入りのおじいちゃんおばあちゃんを見つけて
擬似近居関係を築いてみる、なんていうのは・・・
ちょっと妄想が過ぎますかね?


そう言えば、「premium」のモデルルームって・・・

そして妄想は続く・・・

そう言えば、気になる情報がもう1つ。
第1回で書いたように、今回募集した「premium」は、お客さんがモデルルームを見て
借りることが決まったら工事をして造る、という方式。

「premium」は限定2戸の募集で、すでに応募者が何組もいるようですが
このモデルルーム自体は貸し出さず、今後のためにモデルルームとして取っておくそうです。

つまり、家具も入っていて眺めもすごい、最上階の特等席が残されている
ということです。

これを使わない手はありません。
例えば、ゲストルームのようにして、団地に住む家族を尋ねてきた人が
一晩泊まれる場所にするとか・・・

実はこの団地の住戸は40~50平米が中心で、おじいちゃんおばあちゃんのところに
孫が遊びに来ても、泊まっていくのに充分な広さとは言えません。

でもゲストルームに泊まることができれば、気兼ねなく遊びに来ることができるし
団地の住みやすさに気が付いて、さっきの近居みたいなことにつながっていく・・・
なんてことも。

あるいは、「トライアルステイ」というのも良いかもしれません。
団地に興味があるけれど、本当に快適に住めるのかどうか、ちょっと試してみたい
という人に、試し住みの機会を作るのが、トライアルステイ。

ボクらは、各地のR不動産でこのトライアルステイを実施しているのですが
以前URにも企画を提案したことがあります。

その時は、別の条件が絡んでいて実現はしませんでしたが
このモデルルームがあれば、そんなこともできそうな気がしてきます。

もしかすると、ボクらが今改めて団地にワクワクしているのは
そんな新しいことを試みる余地が、たまに顔を覗かせるからなのかも・・・

ということで、次回はそんな新しい試みの中から、ベロタクシーについてレポートします。

ベロタクシーの「ベロ」はフランス語で自転車の意味。
自転車のタクシーが、団地の自治会の手によって運営されるのです。

第1回の時点では、未確定な部分もありましたが、東京都からの補助金も下り
正式にスタートを切ったこのプロジェクト。

新緑の団地に、お年寄りを乗せたベロタクシーが疾走する様子を、次回お伝えできればと思います。

お楽しみに。

※「new basic」タイプは2013年3月以降、抽選ではない通常の募集形式でも、募集開始予定です。

館ヶ丘団地の紹介ページ(団地R不動産)
http://www.realdanchiestate.jp/?p=879

「Tategaoka」館ヶ丘団地 特設サイト(UR)
http://www.ur-net.go.jp/akiya/tokyo/tate/

館ヶ丘団地の物件情報(UR)
http://www.ur-net.go.jp/akiya/tokyo/20_2600.html

【連載】生まれ変わる館ヶ丘団地
第1回 38年目の転機
第2回 近居してみる?
第3回 そして走り出した