text=大我さやか(Open A)・安田洋平(Antenna inc.)
BBQ? どうぶつえん? 音楽スタジオ? DIY工房? なんと、全て団地にあるんです。
団地にある豊かな「共用空間」を、思いっきり楽しんで使い倒す「団地フェス in OSAKA」という試みをご紹介。


森の中でBBQ?いえいえ、ここは団地の庭なんです。

この秋、大阪の団地はアツかった。
いくつもの団地で、これまでになかった一風変わったイベントが展開された「団地フェス in OSAKA」。
フェスといっても、サマソニとかフジロックのような“音楽フェス”ではなく、団地にある「共用空間」を面白く使い倒す実験的なイベント。広場、公園、集会所、さらには空き部屋まで、団地でシェアする空間ならどこでも!

今まであまり使われていなかった団地の「共用空間」が、団地フェスのプログラムによって、生まれ変わったようにキラキラと輝いたこの秋。団地の「共用空間」ってこんなに面白く使えるのか! と再発見の連続でした。

今回は、団地フェスで行われたいくつかの実験を通して、団地暮らしがもっと楽しくなる「共用空間」の使い方をご紹介します。

緑もさもさの屋外空間は、まるでテーマパーク!?

アルパカ、ラクダ、ラマ、ポニー、鳥、ヘビ、コウモリ、etc. こんなに盛りだくさんとは、想定外でした。

「都島リバーシティ」で、昨冬に続いて二度目の開催となった「URどうぶつえん」は、団地の広場に“動物園”が突如出現するというイベント。とはいえ、参加するまでは正直、きっと「それなり」なイベントに違いないと、高をくくっていました。

しかし……、予想は見事に裏切られました。
会場の入口をくぐるやいなや、目に飛び込んできたのは、ニシキヘビを首に巻いたやんちゃそうな男子。
そして、そばにいた女子たちがキャアキャア声をあげている光景……。

「楽しく触れあえる」を売りにしているとのことでしたが、いきなり予想外のワイルドさ。
開園してまだ間もないのに、すでに広場は入りきれないくらいの子どもたちでいっぱいです。


まさに子どもたちには、団地がテーマパークになっちゃったかのようなワクワク感。

ポニーやアルパカ、アカダイショウや謎のトカゲ、さらにはプレーリードッグやコウモリといった珍しい動物も。
中でも子どもたちに大人気だったのはラクダ。背に乗って記念写真を撮影しているそのまわりを、幼児を乗せたミニSLがポッポッと小気味よい音を立てながら走る姿は、のどかであり、シュール。

UR主催で行われている「URどうぶつえん」というこの企画。
「今回はわれわれURが中心で企画をしましたが、団地には広い敷地があるので、自治会や住民の方たちに『こんなこともできるんだ』と体感してもらうことで、今後いろんな使い方にチャレンジしていただけたらと思います。私たちはいい形でそれをサポートしていけたら」と担当者。 

「都島リバーシティ」は、淀川の河川敷がすぐ近くにあり、自然豊かで、屋外の遊び場が充実。
それに加えてこんな楽しいイベントがあったらなおのこと、子どもたちは家から飛び出していきたくなるに違いありません。

休日は団地の庭で、仲間と一緒にアウトドアBBQ

本格的なBBQを楽しめる箕面団地の常設BBQコンロ。イベント時にはこちらも本格的、出張バリスタも登場。

こちらは打って変わって大人も子どもも楽しめるイベント「UR×DIYキャラバンツアー」。昨年から始まったこのイベントは、URの若手社員有志でつくる「UR DIY部」が仕掛けるプログラム。今年は、6月の郡山駅前団地を皮切りに、北緑丘、武庫川、森ノ宮、箕面粟生団地の5団地で開催されました。

「DIY」を掲げるこのプログラム。
気軽にDIYを楽しんでもらおうと、必ず子どもと一緒に参加できるDIYワークショップが開催されています。オリジナルのクラフトボックスやキャンドルづくりは、本当に多くの家族連れで賑わっていました。

しかしDIYはもちろんですが、キャラバンツアーの魅力はそれだけではありません。
もうひとつの魅力は「食」! なんと、団地で流しそうめんやBBQが楽しめるのです! 

これぞ団地ならではの楽しみ方。
屋外でみんなと一緒に食べる食事ってやっぱり違いますよね。
イベントには団地の住民以外の方もたくさん訪れて、みんなで一緒に楽しんでいました。

でもイベントだけじゃなくて、ふつうの週末に仲間と一緒に“外飯”を楽しみたい……。
そんな方に朗報です。箕面粟生団地の集会所には、常設のBBQコンロと屋外シンクがあるのです。
コンクリート製のシンクと、レンガ積みのコンロはオシャレで本格的。

さらに「この場所をもっとたくさんの人に知って、使ってほしい」ということから、BBQ芸人の「たけだバーベキュー」さんを呼んでの大BBQパーティー。さながら風景は、森の中のキャンプ場。

こんな素敵な場所があるなら、友だちを呼んで毎週アウトドアパーティーも楽しめそう。
団地を選ぶ魅力の一つになりそうです。

集会所は、「欲しい」をシェアする場へ

キッズルームに、DIY工房。これまでにない“新しい”集会所の使い方は、みんなの「欲しい」をシェアすることがポイントです。

どの団地にも必ずある「集会所」。
でも実際入ったことのある人は、団地の住民でも少ないかもしれません。

特に、団地に住みはじめたばかりの若い方や子育て世帯には、不慣れな場所かも。
そもそもどうやったら使えるのか、何ができるのか、分からない人も多いはずです。

泉北城山台二丁団地の集会所はこの夏、子育てママさんたちの協力でリニューアルしました。
ここで2015年7月から始まった「みんなの子育てひろば」は、地元生協が運営する未就学児のための室内遊技場。
ママたちの集いの場として開催されているこのイベントでは、8月にURと一緒に集会所をリニューアルしたのです。

天井は青空に、床にはウレタンの柔らかい素材を敷きつめて、壁や建具にはポップな色を塗り、さらに子どもたちも参加してかわいいウォールステッカーが貼られました。なんとDIYには30組の家族が参加されたそう!

なんとなくくたびれていた集会所も、DIYで手を加えることで、子どもたちも愛着を持って使える空間に生まれ変わります。


壁一面に収納された工具。作業台や掃除機まで完備のDIY工房なら、音も木くずも出し放題!

こちらは先ほども登場した箕面粟生団地。
この団地の集会所には誰でも使えるDIY工房があります。

URには内装を自由に改修できる「DIY住宅」がありますが、家の中で木を切ったり、ペンキを塗ったり、はたまた工具を全て揃えるのは大変。このDIY工房には、壁一面にレンタル工具がびっしり備え付けられ、好きなときにDIYが楽しめます。

あまり使われていなかった集会所から、みんなが欲しいものを「シェア」できる場へ。
あると嬉しい場所や設備を、みんなで一緒につくるという発想は、これから集会所を楽しく使うヒントになるかもしれません。

空き部屋もシェア? 個室ならではの使い方

空き部屋に出現した音楽スタジオ。URの若手社員がDIYで仕上げました。

最後にご紹介するのは、なんと空き部屋。
ただし空き部屋といっても、耐震補強のために部屋の真ん中に鉄骨のブレース補強が入って使われなくなってしまった部屋。
森ノ宮団地には、こうした耐震補強で使われなくなった部屋がいくつかあって、それを「共用空間」にしようという試みです。

その名も「CAVE」。“ほら穴”という意味の音楽スタジオです。
部屋の中に4畳の練習用の防音スタジオが置かれていて、なんとアンプやカラオケ機材も完備。
しかも1時間240円で借りられるというから、驚きです。
利用できるのは居住者限定ですが、バンドメンバーを呼んで練習したりと、音楽好きにはたまらない団地になりそう。

お披露目のときには、アーティストを呼んで集会所でライブが行われ、この調子で盛り上がっていけば、文字通りの「団地フェス」も夢ではないかも? と、ココロがアツくなる空き部屋の使い方です。

まだまだ可能性がある、団地の「共用空間」の使い方

団地の「共用空間」は誰のもの?
それは、住んでいる人のものでもあり、そこで商売をする商店主のものでもあり、近隣に住む人たちのものでもあり、団地の外から訪れる人のもの。みんなにとって無関係な場所ではありません。
団地の「共用空間」という大きな余白をうまく使えば、それは自分たちの暮らしをもっと豊かにしてくれるものに変わるのです。

「団地フェス」での実験は、決して多額の費用をかけてやっているわけではありません。
ときにはDIYで、ときにはシェアで、そういう空間や場をつくっているに過ぎないのです。
これからも面白い実験が、様々な団地の「共用空間」で起こるといいですね。

関連リンク:
団地フェス in OSAKA
UR×DIYキャラバンツアー