

(※こちらもどうぞ 「SUN SELF HOTEL」取材レポート-団地の夜空に太陽が昇る)

まったく不思議な一晩だった
団地の夜空にほんのり輝く「太陽」を目撃してしまった。
「太陽」の真下にあったベンチに座っていると、知り合いの団地自治会の方がふらっとやってきた。私とその人はそれぞれ一杯のコップをもって酒を注ぎ、幻想的な光の下でゆっくり呑んだ。なんでこんなものが?これはなんのために?と考えることは簡単だが、言葉にならない景色にひとまず身を委ね、酔いしれるということも大切だろう。
ふと我に返る。ベンチから「太陽」と別の方向を見上げると、煌々と光る部屋がある。いま東京と静岡からやってきた家族があの「客室」に宿泊しているのだ。そう思うと、宿泊客の様子を案じる「ホテルマン」として自分の身が引き締まるのを感じた。

予測不能なコトを起こす
団地に現れた「太陽」と「客室」、これらは《サンセルフホテル》という一風変わった「ホテル」がもたらした風景である。団地住民の方々を中心とした「ホテルマン」と団地外からやってきた宿泊客が一緒になって、昼間に特製の太陽光システム「ソーラーワゴン」をひきながら団地を歩き、蓄電した電力で夜空に光る「太陽」を浮かべる。団地の空き室は手づくりの「客室」に変わり、部屋の電力も太陽光で賄う。太陽(SUN)とホテル(HOTEL)を自分たちの手(SELF)でつくりあげるアートプロジェクト、《サンセルフホテル》。
発案した本人であるにもかかわらず、この夜の状況に私は誰より一喜一憂してしまっていたかもしれない。なぜなら私は発案者でありながら、1人のホテルマンだから。実際、客室がどんな部屋になるのか、太陽をどうやって光らせるか、ルームサービスに何を用意するかなどの重要な中身については発案の段階で無責任にもまったく考えておらず、すべてはまだ見ぬ「ホテルマン」との出会いに委ねていた。
