Rトピックス
復活!! 野方団地
Text=千葉敬介(東京R不動産)
都心から程近い、こんな場所に残っていた公団住宅初期の小さな団地。
長らく募集されていなかったこの団地で、入居募集が再開。
たった5棟という小規模ながら、ここには団地の魅力が凝縮されています。


改修工事が始まる前、2014年5月頃の写真。この団地には外とは別世界のような、緑に囲まれる環境が残っています。
“奇跡の団地”と同級生

都心から近いあの野方団地で、ずっと休止していた募集を再開!
そんなアツいニュースが飛び込んできたのは1年半ほど前、2013年の夏でした。

山手線の「高田馬場」からわずか数駅。しかも、駅から5分というこの場所に、野方団地はあるのです。
周りは中野区らしい住宅街。戸建やアパート、そして小さなマンションがひしめくように建っています。
そして駅前の賑わいをそろそろ抜けたかなという辺りで、急に現れるこんもりとした木立。
その中に、この団地があります。

竣工は1959年なので、今から55年ほど前。
三浦 展さんたちの著書『奇跡の団地 阿佐ヶ谷住宅』にもある、あの有名な阿佐ヶ谷住宅が1958年築。
惜しくも取り壊されてしまったその名作団地と、ほぼ同時期に建てられたこの団地が復活。
これは、アツくならずにいられません。


これは今の様子。外壁も塗り替えられて、まもなくきれいな姿でお目見えです。
まるでタイムカプセル

実は野方団地と阿佐ヶ谷住宅には、建設時期の他にもいくつかの共通点があります。
例えば立地。山手線の西側かつ、程近い距離にある住宅街という点でも、2つはよく似ているのです。
そして戸建が並ぶ中、突然ぽっかりと団地の敷地が現れる、という点でも。

建設当時、田畑が広がるのどかな田園地帯だったこの地域では、急速に宅地化が進んでいました。
そんな様子は、当時の航空写真を見ると手に取るように分かります。
それは、まさに日本が高度経済成長に沸き始めた時代。
仕事を求めて、人々が農村などから大都市圏へと流れ込んできた時期です。

そんな流れを受けて、都心から程近いこの場所にも、人々が我先にと家を建て始めます。
そこにたまたまあった、まとまった大きさの土地が敷地として選ばれ、この団地が建てられたのです。

その後も、周辺では住宅が次々と建って、人口密度が急上昇。
でも団地の中では、田園だった頃ののどかな雰囲気が残されたまま、時間がゆっくりと流れてきたのです。

団地内にふらりと迷い込めば、そこには建設から50年以上を経て、立派に育った木々が出迎えてくれる。
まるで大きなタイムカプセルにでも入ったような、不思議な気分が味わえるのです。


航空写真で見ると一目瞭然。建物がひしめく住宅街にぽっこり残った木立の中、この団地が建っています。
通底する設計思想

この団地の特徴のひとつが、とても小ぶりだということ。わずか5棟、小さな団地です。

敷地になった土地を古い地図で調べると、見て取れるのが「山本邸」の文字。
定かではありませんが、大正時代に内閣総理大臣を務めた、山本権兵衛の別邸だったという噂も聞かれます。
その真偽のほどは分かりませんが、当時の写真でも広々とした庭に、大きな池のある様子が残されています。

実は、上の航空写真で団地の東側に見えている、木々が生い茂った邸宅も、元は同じ山本邸の庭でした。
今は、借景として楽しむことができるこの緑も含めた、広大な庭を持つ大豪邸。
その敷地は、すぐ南を流れる妙正寺川に向かって、ゆるやかに傾斜しています。

当時、団地の建設に当たっては、この地形の高低差がそのまま残されることになりました。
そしてそれも、この団地が阿佐ヶ谷住宅と共通する点でもあるのです。

阿佐ヶ谷住宅の配置計画をした津端修一氏は、土地の形状などを生かした設計をすることで知られる人。
その作風は公団の中で「風土派」と呼ばれ、数々の名作団地を生み出しました。
そんな設計思想の影響は、小さなこの団地からも感じることができるのです。

そして敷地の東に配置されたのが、2棟のスターハウス。
輝くきら星は、外で続く旧来の暮らしと、団地での新しいライフスタイルとを分ける、シンボルだったのかもしれません。


こんなかわいらしいスターハウスがまだ残っていたとは!
8年半ぶりの募集!

さて、そんな気になる野方団地はで、いくつかの住戸が新しく改装され、定期借家で募集開始。
今回はスターハウスではないのですが、外壁を塗りなおし、外構部分も手を入れ、きれいになってお目見えします。
募集住戸では、内装も全て新しくなりました。

そして実は、この野方団地の魅力は団地の外にもあるのです。
駅前には、とても活気のある商店街が、なんと5つ。
小さな店が集まって、昭和っぽい独特の雰囲気を醸し出し、街はいつもにぎやかです。

実際に昭和初期から続く定食屋や、煎餅屋。まるで闇市の雰囲気を残すような謎のアーケードもあり。
さらに飲み屋や、ラーメン屋の数には目を見張るばかり。
なのにどの店もお客さんが溢れているのには、驚かされてしまいます。
もちろん、八百屋や、惣菜屋、スーパー、それに気の効いたカフェやパン屋なども充実。

そんな活気ある商店街を含めた、周辺の気になるスポット満載の地図を製作中。
それを手に野方の街を散策してもらえたら、きっと楽しいと思います。

募集は3月14日から先着順での受付です。募集戸数は多くないので、お見逃しなく。


おいしい食べ物屋も、気になるスポットも満載。楽しくて深い街、野方。
野方団地 入居者募集(先着順・窓口限定受付)

時期:2015年3月14日(土)~
住所:東京都中野区野方5-7
募集概要:2DK 44平米(住宅専用面積)

問い合わせ先
UR新宿営業センター
03-3347-4330
※団地の概要等については、3月13日(金)にURのサイトで公開予定です。
(先着順受付の開始は、3月14日です。)
※団地R不動産では、募集についてのお問い合わせは受け付けておりません。