text= 大我さやか(OpenA ltd.)
取手アートプロジェクト(TAP)で知られる取手井野団地。今回は団地に住みながら活動を続けるTAP羽原さんと、取手井野団地の日常についてレポートします!


取手井野団地で2008年から開催されている取手アートプロジェクト。アートのある団地の日常とは?

電気・ガス・水道・アート完備!?

茨城県南部の取手市にある取手井野団地。
取手アートプロジェクト(以下、TAP)といえば、思い当たる人もいるでしょう。
それまで取手市内の各所を会場に行われていたTAPが、2008年からこの井野団地で活動を展開しています。

そのTAPの実施本部の中心的役割を担う、羽原康恵さん。
羽原さんは、その2008年から団地に移住し、TAPの事業運営を通じて、日々井野団地内でのコミュニティー活動や取手市内のアート活動支援を行っています。

団地とアートの意外な接点。

TAPは東京藝術大学取手キャンパスに先端芸術表現科が新設された1999年から始まりました。
発足当初から2009年度までのTAPは、取手の街をフィールドに、アーティストの作品を街中に展開する「公募展」と、取手市在住作家のアトリエを公開する「オープンスタジオ」を隔年で開催するイベント型のプロジェクトでした。
古民家や空き店舗、遊休施設をまるごとアートにしたり、今はなきセキスイハイムM-1というユニットハウスを作品素材として活用するなど、都市や空間を使ったダイナミックなアートイベントをおこなってきました。

そのTAPが2008年に公募展の会場として選んだのは、2,000世帯を超える人びとが暮らす取手井野団地。

「これまでは人が住んでいない場所を舞台として実施してきた公募展ですが、
団地は、住む・暮らすという日常の象徴的な場所で、これまでTAPが入り込んでいなかった場所。
アーティスト・イン・レジデンスという形で、住みながら団地の住民と交流、ある種の化学反応を生みながら制作ができる、まさに社会の縮図として面白い環境だと思ったんです。
そこで、URと交渉して、団地の一部を市とTAPで借り上げて、
期間限定で団地の部屋にアーティストが暮らし、居室内や屋外で公募で選出された作品プランを実現、発表しました」


TAPを運営しながら、自身も取手井野団地に住んでいる羽原康恵さん。2DKの住まいは旦那さんとお子さん1人の3人暮らし。

「2008年度は、期間限定であるとはいえ、団地の自治会の協力なしには何事も立ちゆかないので、まずは自治会に協力をお願いしました。
最初はお互いに手探りだったものの、2008年のイベントで、若者がいるとこんなに活気があるんだとか、若者に力仕事をやってもらえるとか(笑)、好印象を持っていただけて、以来自治会の方からのご理解を得て、色々と助けてもらってきました」
それ以降、自治会主催のもちつき大会や夏祭りの櫓建てなどには毎回駆り出され、日々住民に「アートさん」と呼ばれ親しまれているようです。