2016年9月12日
大ヒット上映中の映画『団地』。何度でも見たくなっちゃうこの面白さをたくさんの人に知ってもらうべくフォトコンテストを開催してきました。
この度、阪本順治監督による厳正な審査が行われましたので、結果発表をいたします。

最優秀賞
受賞者:kaedeさん
投稿コメント:部屋片してたらでてきたので。
少し前だけど、父母ともにシルエットだけど若い。
阪本順治監督の選評:
「団地で育った子供の視線に、生活の実感を感じた。シルエットで表情が見えない分、饒舌で想像力を駆り立てられた」
作品を撮ったいきさつ:
この写真は6年前くらいにフィルムを始めたての頃撮った写真です。
シルエットになってる2人から色々と想像できる世界になっていればと思う一方で単純に私の家族のふとした一コマの思い出写真でもあります。
また団地と言うのは独特な不思議な世界で、子ども達の鬼ごっこや秘密基地も大人の面倒くさいうわさ話も一つ一つ日常に溢れる一コマなんですが、団地やニュータウンってくくりにいるだけでそれがとてもストーリー性をもつものになる空間な気がします。

いいね賞(「50いいね!」を獲得された方)
受賞者:yocosbananaさん
投稿コメント:幸せ
「団地と夫婦」をテーマに皆さんにご参加いただいたフォトコンテスト。
一枚一枚の写真から、団地で紡がれている暮らしの様子が伝わってきました。
大量供給、大型団地と大きなかたまりとして見られがちな団地ですが、一人と一人が出会い夫婦となって、毎日の暮らしが営まれている。そんな暮らしが積み重なって、団地が生きている。
今回のフォトコンテストを通じて、改めて団地の魅力を感じました。
そして、今年は空前の団地映画YEAR。(『団地』、『海よりもまだ深く』、『アスファルト』……)
どの映画も(団地のひいき目なしに)とても面白いです。
団地を舞台にいろいろな人の人生が交わったり、ゆるくつながっていたり、妄想してみたり、助けたってみたり……
楽しいことだけじゃなくて、辛いことも悲しいこともいろいろあるけれど、みんなが毎日を生きている。そんなたくさんの暮らしをざっくりと受け入れてくれる、器の大きな団地。
文化の秋、団地で生まれるストーリーを楽しんでみてはいかがでしょうか。
ご協力いただいた皆さま、ありがとうございました。
『団地』は全国で絶賛上映中です!
映画『団地』公式サイト
2016年9月2日
団地の映画が、なぜか空前の大豊作を迎えている2016年。
今度は海を越えてフランスから、団地を舞台にした映画がやってきました。
ほのぼのと、そしてじんわりと心に染みる、とても素敵な映画です。

ストーリーを、そしてその魅力を、ひとことで表わすのが、なかなか難しい映画です。
でも、それだけに映画でしか味わえない魅力に溢れ、そして団地が舞台だからこそ描けた時間や世界観がそこにあって、心からお薦めできる映画だと思います。
フランスの郊外にある古ぼけた団地を舞台に、淡々としたリズムで描かれる情景。
すごくドラマチックなストーリーがあるわけではありません。
いや、あります。
屋上にいきなりNASAの宇宙飛行士が不時着するし、隣の部屋に(元?)大女優(?)みたいな人が引っ越してくるし、冒頭からいきなり事故で車椅子だし。
でもそんな事件の衝撃も、団地に流れる日常のリズムは、あっという間に吸収してしまうかのようで。3つの出来事をきっかけに生まれる3つのストーリーは、交わることなく同時に、そして静かに、進み始めるのです。

愛すべき3組の主人公による、3つのストーリー。
それが、ミニマルな団地という空間の中で、同時に進行していくこの映画。
縦に連なるバルコニーが印象的な、シンプルな箱型の建物。
その連なりは、まるでフィルムのコマを表わしているかのようで、どれも同じかと思える四角い窓の中には、それぞれに生き生きとしたシーンがあるのです。
それがパラレルに進んでいくという構成は、まさに団地の日常を象徴するよう。
そしてそんなパラレルな関係に引き込まれてしまうのは、主人公たちが、相手には見せていない、もうひとつの世界を抱えているからなのかもしれません。
なぜか親の姿がない、影のある雰囲気がかっこいい少年、心を寄せる素敵な女性に世界中を旅するカメラマンだとウソをついてしまう、冴えない太った中年男、理由があって息子と離れて住んでいるおばあちゃん。宇宙飛行士に至っては、たくさんの機密を抱えているばかりか、英語もさっぱり通じず意思疎通もままなりません。

そんなひと癖もふた癖もある彼らの個性が、魅力として映るのは、舞台が団地だからなのだと、団地好きの悪い癖で、ついつい思ってしまいます。
実際、彼らの住む場所が、仮によくある分譲マンションだったりすると、「このデザインのマンションを好むこの人は……」などと要らぬノイズがフィルタになるところ。
団地というシンプルな箱に住んでいるというだけで、その人の飾らない性格や、素直な生き方が記号化されて、濃すぎるほどの個性も魅力として浮き上がるのでしょう。
そして、そんな彼らがゆっくりと心通わせてゆくこの映画に、いつしか魅了されているのです。
詳しい内容については映画を見てのお楽しみですが、お薦めの映画なので、ぜひ!
そう、映画『団地』の阪本順治監督が、「団地にはファンタジーが入り込む余白がある」と語っていたのを思い出しました。

最後に、パンフレットからサミュエル・ベンシェトリ監督の言葉を引用しておきます。
『アスファルト』で、私は、この手の題材を描く時に普通はお目にかからないような登場人物たちを通して、ある種風変わりなストーリーを作りたいと思っていた。一言で言うならば「落ちてくる」3つの物語、と言えるだろう。空から、車椅子から、栄光の座から人はどんな風に“落ち”、どのように再び上がっていくのか。『アスファルト』製作中、この疑問がいつも頭にあった。なぜなら団地に住む人々は皆、“上る”ことに関してはエキスパートだから。子供時代を団地で過ごした私にとって、そこでの生活で感じていたあれほどまでに強い団結力に他では出会ったことがない。
上映の情報など、詳しくは映画のオフィシャルサイトで。
映画『アスファルト』公式サイト